時を束ねて リボンをかけて

2023-09-20 (Wed) 23:45

LONESOME隼人(ローンサム・ハヤト)

LONESOME隼人
(ローンサム・ハヤト)


郷隼人 著

2004年4月25日 (株)幻冬舎 発行
図書館から借りた本。 読了。

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著者は鹿児島県出身。
1985年、殺人事件で収監。以後、終身犯として米国の刑務所に服役中。
独学で短歌を学び、96年朝日歌壇に初入選。


この本は著者の短歌とエッセイ。

この古い本をどうして読む気になったかというと、「ホームレス歌人のいた冬」という本を読んだことは前に書いたが、朝日歌壇に投稿していたホームレス歌人を探す内容の本で、名乗り出ず見つけることができなかったが、その中にこの人のことが書かれていたので、読む気になった。

殺人の、動機や経緯やその内容などはもちろん触れられていない。


心打たれた短歌に「老い母が独力で書きし封筒の 歪(ゆが)んだ英字に感極まりぬ」というものがある。

服役生活の最初の10年は母親は一度も手紙を書かなかった。
父親は手紙をくれたらしいが、その父親が脳梗塞になって、半身不随で入院中と知らせてきた。
英文など書いたことがないだろう母親が、独力で宛名を書いたことを詠んだ短歌である。

短歌については、私自身が短歌ではなく、短歌もどきしか作れないから(しかも私の場合は勉強もせず、ただ31文字に収めただけの自己満足にすぎない)著者の短歌は素晴らしいと思うが、それよりもエッセイが面白かった。
20年前の本だから、今の刑務所内は変わっているのかもしれないが、その当時のアメリカの刑務所には、どこに行っても猫がたくさんいると書かれている。
「獄塀のほんの隙間を行き来する 仔猫抱けば生命(いのち)の温もり」という短歌もある。


食事に出たトマトから種を取り、それをまいてトマトを栽培したり、お米の炊き方を極めたり、創意工夫にあふれた孤独な刑務所暮らしの内容は、驚いたり感心したり。

なにしろ、貼られている警告文がすごい。

「当施設の施設内、または近くに着陸した、いかなる航空機(ヘリコプター、セスナなども)に向かって行く収容者に対し、当局のガードは脱獄を阻止するために撃つ」
脱獄なんて映画の中でしか知らないが、脱獄を試みたら、ためらわずに撃たれるだろう。


96年に初入選してから、朝日歌壇の常連となり、2011年からプツリと投稿が途絶えたらしいが、それから10年過ぎて2014年に「LONESOME隼人 獄中からの手紙」という2冊目の本が出版されている。
もちろん私の住んでいる市の図書館には置いてないから、また探してもらうしかないが、機会があればそれも読んでみたい。


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Last Modified : 2023-09-21
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