昨日の続きです。
1月5日。
朝、クラクションの長押しの音が聞こえた。
前に住んでいたところでは、そのクラクションの長押しが家からご遺体が運び出される合図だから、近所の人たちは外に出て手を合わせて車を見送ったものだった。
ここではそういうことはないので、私は家の中から手を合わせた。
6日の午前中に、他県ナンバーの車はいなくなって、午後から隣に行ってきた。
この度は・・・・モグモグ・・・お線香を・・・
私はそんな感じだったが、ご主人は、あがってあがって・・と家に招き入れてくれた。
花に囲まれた白い台の上に、ご遺骨と大きな写真.位牌。
97歳だった。ご主人は年下で93歳。
線香をあげた後、ご主人が亡くなった時の様子を話し始めた。
点滴を受けに病院に行って、帰ってきてダイニングの椅子にすわった。
すると、するりと椅子から滑り落ちた。
抱き上げて椅子に座らせようとしたのだが、ご主人は腰が痛くて力が入らない。
そこで救急車。
まさか死んでいるとは思わなかった…と。
病院に入院していたわけでもなく、施設に入っていたわけでもなく、自宅でご主人のそばで亡くなられたのだから、奥さんは幸せだったと思いますよ・・・というようなことを私は言った。
それから、私はほとんど口を挟まず、ご主人がいろいろ話すのを黙って聞いていた。
○○に住んでいる奥さんのお姉さんの子供たち、つまり姪2人と甥1人が来てくれたこと。
葬儀は、姪の旦那にすべて任せたこと。
奥さんの貯金から今回の費用を出したかったのだが、貯金をおろすことができなくて、自分が支払ったこと。
家も土地も奥さんの名義にしてあること。
などなど・・。
そして、奥さんの貯金も家も名義を自分に移さなければならない。
だけど、奥さんの本籍が○○にあって、この年で○○まで行けないから戸籍謄本が取れないと言うのだ。
戸籍謄本はこちらでも取れますよと私は教えたが、「取れないよ。姪の旦那が取れないと言ったもの」と言う。
知らないだけじゃないのかなと私は思ったが、私の父が亡くなった時には、司法書士にすべて任せたことを話した。
しかしだ。
ずっと話を聞きながら、あれ?と思うことがあったので、聞いてみた。
「ご主人は本籍はどこですか?」と。
すると、今の家に引っ越してきたときに、この住所に移したと言う。
そう聞いた時に、うわぁ~!!!顔には出さず、これはまずい!うっかりしたことは言えない。と頭の中で思った。
つまり、籍を入れていない。
内縁関係だ。
籍を入れていれば、本籍は一つ。
別々はありえない。
う・・・ん。
奥さんの貯金も、家も土地も、ご主人に相続の権利はないという現実。
数年前に、奥さんに姪や甥がいることがわかり、何十年も音信不通だった関係だけれど、ご主人からみれば、突然現れた奥さんの親戚に相続権があるのだ。
自分の建てた家なのに、自分のものではない。
これは・・・本人がそれに気がついていないから、私のほうがつらくなってしまった。
しかしそれが現実なのだ。
ずっと正座をして聞いていたから、もう一方の頭の中では、ご遺骨の前で、立ち上がるときにコケるわけにはいかないと思っていた。
私は正座は平気だが、長い間正座をする機会がなかったから、もしかしたらコケるかも・・・と不安になっていたのだ。
さりげなく平静さを保ちながら、私の頭の中は、実は目まぐるしくいろいろな感情でごった返していた。
「いてえ!」とか、「足が~!」とかは、避けたい。
すでに、30分はゆうに過ぎているから、帰るタイミングを計っていたのだが、なかなかご主人の話が終わらない。
私の気持ちが沈んでしまったときに、ピンポーン。
スッと立ち上がれた。
集金人が来ただけだからまだ居て!とご主人に言われたが、またゆっくり来るからと言って、おいとますることができた。
人には試練がある。
どんなにこのご主人がお気の毒でも、絶対に私が踏み入れてはいけない他人の家のこと。
それを肝に銘じて、頭の中にインプットしておかなければならない。
人の悲しみや苦しみの中に、他人が踏み込めない領域が存在するのであれば、それには気づかないふりをして、そっとしておくしか私にはできないのだ。

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1月5日。
朝、クラクションの長押しの音が聞こえた。
前に住んでいたところでは、そのクラクションの長押しが家からご遺体が運び出される合図だから、近所の人たちは外に出て手を合わせて車を見送ったものだった。
ここではそういうことはないので、私は家の中から手を合わせた。
6日の午前中に、他県ナンバーの車はいなくなって、午後から隣に行ってきた。
この度は・・・・モグモグ・・・お線香を・・・
私はそんな感じだったが、ご主人は、あがってあがって・・と家に招き入れてくれた。
花に囲まれた白い台の上に、ご遺骨と大きな写真.位牌。
97歳だった。ご主人は年下で93歳。
線香をあげた後、ご主人が亡くなった時の様子を話し始めた。
点滴を受けに病院に行って、帰ってきてダイニングの椅子にすわった。
すると、するりと椅子から滑り落ちた。
抱き上げて椅子に座らせようとしたのだが、ご主人は腰が痛くて力が入らない。
そこで救急車。
まさか死んでいるとは思わなかった…と。
病院に入院していたわけでもなく、施設に入っていたわけでもなく、自宅でご主人のそばで亡くなられたのだから、奥さんは幸せだったと思いますよ・・・というようなことを私は言った。
それから、私はほとんど口を挟まず、ご主人がいろいろ話すのを黙って聞いていた。
○○に住んでいる奥さんのお姉さんの子供たち、つまり姪2人と甥1人が来てくれたこと。
葬儀は、姪の旦那にすべて任せたこと。
奥さんの貯金から今回の費用を出したかったのだが、貯金をおろすことができなくて、自分が支払ったこと。
家も土地も奥さんの名義にしてあること。
などなど・・。
そして、奥さんの貯金も家も名義を自分に移さなければならない。
だけど、奥さんの本籍が○○にあって、この年で○○まで行けないから戸籍謄本が取れないと言うのだ。
戸籍謄本はこちらでも取れますよと私は教えたが、「取れないよ。姪の旦那が取れないと言ったもの」と言う。
知らないだけじゃないのかなと私は思ったが、私の父が亡くなった時には、司法書士にすべて任せたことを話した。
しかしだ。
ずっと話を聞きながら、あれ?と思うことがあったので、聞いてみた。
「ご主人は本籍はどこですか?」と。
すると、今の家に引っ越してきたときに、この住所に移したと言う。
そう聞いた時に、うわぁ~!!!顔には出さず、これはまずい!うっかりしたことは言えない。と頭の中で思った。
つまり、籍を入れていない。
内縁関係だ。
籍を入れていれば、本籍は一つ。
別々はありえない。
う・・・ん。
奥さんの貯金も、家も土地も、ご主人に相続の権利はないという現実。
数年前に、奥さんに姪や甥がいることがわかり、何十年も音信不通だった関係だけれど、ご主人からみれば、突然現れた奥さんの親戚に相続権があるのだ。
自分の建てた家なのに、自分のものではない。
これは・・・本人がそれに気がついていないから、私のほうがつらくなってしまった。
しかしそれが現実なのだ。
ずっと正座をして聞いていたから、もう一方の頭の中では、ご遺骨の前で、立ち上がるときにコケるわけにはいかないと思っていた。
私は正座は平気だが、長い間正座をする機会がなかったから、もしかしたらコケるかも・・・と不安になっていたのだ。
さりげなく平静さを保ちながら、私の頭の中は、実は目まぐるしくいろいろな感情でごった返していた。
「いてえ!」とか、「足が~!」とかは、避けたい。
すでに、30分はゆうに過ぎているから、帰るタイミングを計っていたのだが、なかなかご主人の話が終わらない。
私の気持ちが沈んでしまったときに、ピンポーン。
スッと立ち上がれた。
集金人が来ただけだからまだ居て!とご主人に言われたが、またゆっくり来るからと言って、おいとますることができた。
人には試練がある。
どんなにこのご主人がお気の毒でも、絶対に私が踏み入れてはいけない他人の家のこと。
それを肝に銘じて、頭の中にインプットしておかなければならない。
人の悲しみや苦しみの中に、他人が踏み込めない領域が存在するのであれば、それには気づかないふりをして、そっとしておくしか私にはできないのだ。

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Last Modified : 2020-03-16