チビを荼毘にした日の、26日の日曜日は寒かった。予約した時間はお昼12時。ゴンやミケが荼毘した霊園の系列で、私の家から近いほうを今回は選んだ。予約したときに、電話に出た人が、どちらでも荼毘をする担当は自分なのでと言われたから。しかし、道に迷ってやっとだどり着き1時間半も行きはかかってしまった。山の中の小さな霊園。担当の男性が出迎えてくれたが、朴訥とした話し方をする若い(といっても30代後半くらいか)男...
チビを荼毘にした日の、26日の日曜日は寒かった。
予約した時間はお昼12時。
ゴンやミケが荼毘した霊園の系列で、私の家から近いほうを今回は選んだ。
予約したときに、電話に出た人が、どちらでも荼毘をする担当は自分なのでと言われたから。
しかし、道に迷ってやっとだどり着き1時間半も行きはかかってしまった。
山の中の小さな霊園。
担当の男性が出迎えてくれたが、朴訥とした話し方をする若い(といっても30代後半くらいか)男性で、事務所と待合室が分かれてない、いたって地味な霊園だった。
しかし、私にはそれが心地よかった。
今はペット霊園も立派になって、人間と同じように荼毘までの流れがスムーズにできるようになっているところが多いが、私に派手さはいらない。
そういう意味において、この担当者はたぶん、人と話すのが苦手なタイプのように見受けられて、私は気に入った。
用紙に必要事項を書き込んで渡すと「19歳なんですか?」と言われた。
なんで・・・・
膀胱がんだったのよ。
ああ・・・・
とにかく余計な言葉をつけ足さない心地よさというものもある。
荼毘の前に、チビに最後のお別れをする。
○○〇のお経を流してもよろしいですか?と聞かれたからお願いしますというと、テープのスイッチが入れられ読経が流れる。
私は無宗教だから、宗派にはこだわらない。
その流れている途中でお線香をあげようとすると「まだです」と制止された。
テープが終わってからお線香をあげて、炉の前に運ばれた。
私はありがとうとごめんねの気持ちで、こみあげるものをこらえて、最後のキスをして見届けた。
1時間くらいかかりますと言われ、再び事務室兼待合室に案内されて、彼は出て行った。
私は外に出て、山の景色を眺めたりしながら、また戻った。
スマホでチビの画像や動画を見ながら、なんて可愛いのだろうか・・・と思ったのだ。
この質素な霊園は、私にはあっていた。
待合室に一人でいるのもよかった。
というのもカンより前は、前に住んでいたところの霊園で荼毘にしている。
やはり山の中にあって、夫婦で営んでいる霊園だった。
奥さんは無口な人だったが、ご主人は話好きで、よく解釈すれば寂しさを紛らわせようとしてくれているかもしれないが、人のことも聞いてくるが自分のことも話してくる、相手にするとかなり疲れる人だった。
だから、一人で待つ時間がありがたかった。
私にとって、長い長い猫との暮らしが終って、ひとりぽっちになったという寂しさを、誰にも悟られたくなかった。
どこかスイッチが入れば、どっと涙があふれそうだった。
猫との暮らしの幸せだった時間は、もう戻ってこないのだ。
それをひとりでかみしめた。
1時間ぐらいすぎたころ、ドアが開いて、終わったという言葉ではなく、頷かれて促された。
チビの骨はまるでこれが猫の骨の標本です・・とでもいうように尻尾の先まで、きれいに並べられていて、ひとつひとつ説明してくれた。
目にとまった小さな骨の集まりは爪の骨と言われた。
爪の骨?
爪が生えるところの骨だそうで、よくよく見ると今爪が生えますというような形をしている。
ひとつが5ミリくらいだろうか・・。
ちっちゃい。
その隣の骨もちっちゃい。
指の骨。
そういうふうにすべて説明してくれたあと骨壺に移した。
普通なら5.6回であとは担当者がすべて骨壺に納めるのだろうが、最後まで二人で交互に骨を収めた。
骨盤の骨のところで「ん?」と思った。
黒い部分があって、これは・・・・
それは…と返事をする前に、
「人間でも、悪いところは黒く焼けるというよね・・・・」と私は言った。
彼は頷きながら、膀胱がんっていってましたよね。
膀胱ってたぶんこの辺にあると思うんです・・・。
その時に、涙が思わずこみあげた。
納得した。
チビがバタンバタンと倒れたのは、骨盤まで転移していたのか・・・それとも先に骨盤が悪くなってしまっていたのかだ・・・・と。
痛かっただろうに…と思うと、心が張り裂けそうだった。
でも‥と彼が言った。
本当に悪くなると、骨が崩れてしまうんですよ。
つまり箸で持ち上げられないくらい崩れてしまうのだそうだが・・一度ワンコでそういうことがあったと。
彼流の慰めかただったのだろう。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
花柄の骨壺を選んだ。
ゴンもミケもそうしたし、覆いではなく、オーガンジーの布で包むことにする。
帰るときに、ここの息子さん?と聞いた?
系列の霊園は中年の男女がいるから、そのオーナーの息子なのかと思ったのだ。
いや違います。僕は従業員です。
父は亡くなっています。
渓流釣りに行って、事故で・・・。
ああそうだったの・・・。
君が何歳の時?とか余計なことは聞かなかった。
それは、礼儀だ。
こんな個人経営の会社だけれど・・・と言っていたが、それでも、この朴訥とした青年には、向いているような気がした・・・。
知識も技術も必要だし、人の悲しみに寄り添える仕事も、この辺鄙な場所であっても。
「一期一会」とか「一期一縁」という言葉があるけれど、私は一緒にチビのお骨を拾ってくれた人が、この青年でよかったと思った。


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予約した時間はお昼12時。
ゴンやミケが荼毘した霊園の系列で、私の家から近いほうを今回は選んだ。
予約したときに、電話に出た人が、どちらでも荼毘をする担当は自分なのでと言われたから。
しかし、道に迷ってやっとだどり着き1時間半も行きはかかってしまった。
山の中の小さな霊園。
担当の男性が出迎えてくれたが、朴訥とした話し方をする若い(といっても30代後半くらいか)男性で、事務所と待合室が分かれてない、いたって地味な霊園だった。
しかし、私にはそれが心地よかった。
今はペット霊園も立派になって、人間と同じように荼毘までの流れがスムーズにできるようになっているところが多いが、私に派手さはいらない。
そういう意味において、この担当者はたぶん、人と話すのが苦手なタイプのように見受けられて、私は気に入った。
用紙に必要事項を書き込んで渡すと「19歳なんですか?」と言われた。
なんで・・・・
膀胱がんだったのよ。
ああ・・・・
とにかく余計な言葉をつけ足さない心地よさというものもある。
荼毘の前に、チビに最後のお別れをする。
○○〇のお経を流してもよろしいですか?と聞かれたからお願いしますというと、テープのスイッチが入れられ読経が流れる。
私は無宗教だから、宗派にはこだわらない。
その流れている途中でお線香をあげようとすると「まだです」と制止された。
テープが終わってからお線香をあげて、炉の前に運ばれた。
私はありがとうとごめんねの気持ちで、こみあげるものをこらえて、最後のキスをして見届けた。
1時間くらいかかりますと言われ、再び事務室兼待合室に案内されて、彼は出て行った。
私は外に出て、山の景色を眺めたりしながら、また戻った。
スマホでチビの画像や動画を見ながら、なんて可愛いのだろうか・・・と思ったのだ。
この質素な霊園は、私にはあっていた。
待合室に一人でいるのもよかった。
というのもカンより前は、前に住んでいたところの霊園で荼毘にしている。
やはり山の中にあって、夫婦で営んでいる霊園だった。
奥さんは無口な人だったが、ご主人は話好きで、よく解釈すれば寂しさを紛らわせようとしてくれているかもしれないが、人のことも聞いてくるが自分のことも話してくる、相手にするとかなり疲れる人だった。
だから、一人で待つ時間がありがたかった。
私にとって、長い長い猫との暮らしが終って、ひとりぽっちになったという寂しさを、誰にも悟られたくなかった。
どこかスイッチが入れば、どっと涙があふれそうだった。
猫との暮らしの幸せだった時間は、もう戻ってこないのだ。
それをひとりでかみしめた。
1時間ぐらいすぎたころ、ドアが開いて、終わったという言葉ではなく、頷かれて促された。
チビの骨はまるでこれが猫の骨の標本です・・とでもいうように尻尾の先まで、きれいに並べられていて、ひとつひとつ説明してくれた。
目にとまった小さな骨の集まりは爪の骨と言われた。
爪の骨?
爪が生えるところの骨だそうで、よくよく見ると今爪が生えますというような形をしている。
ひとつが5ミリくらいだろうか・・。
ちっちゃい。
その隣の骨もちっちゃい。
指の骨。
そういうふうにすべて説明してくれたあと骨壺に移した。
普通なら5.6回であとは担当者がすべて骨壺に納めるのだろうが、最後まで二人で交互に骨を収めた。
骨盤の骨のところで「ん?」と思った。
黒い部分があって、これは・・・・
それは…と返事をする前に、
「人間でも、悪いところは黒く焼けるというよね・・・・」と私は言った。
彼は頷きながら、膀胱がんっていってましたよね。
膀胱ってたぶんこの辺にあると思うんです・・・。
その時に、涙が思わずこみあげた。
納得した。
チビがバタンバタンと倒れたのは、骨盤まで転移していたのか・・・それとも先に骨盤が悪くなってしまっていたのかだ・・・・と。
痛かっただろうに…と思うと、心が張り裂けそうだった。
でも‥と彼が言った。
本当に悪くなると、骨が崩れてしまうんですよ。
つまり箸で持ち上げられないくらい崩れてしまうのだそうだが・・一度ワンコでそういうことがあったと。
彼流の慰めかただったのだろう。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
花柄の骨壺を選んだ。
ゴンもミケもそうしたし、覆いではなく、オーガンジーの布で包むことにする。
帰るときに、ここの息子さん?と聞いた?
系列の霊園は中年の男女がいるから、そのオーナーの息子なのかと思ったのだ。
いや違います。僕は従業員です。
父は亡くなっています。
渓流釣りに行って、事故で・・・。
ああそうだったの・・・。
君が何歳の時?とか余計なことは聞かなかった。
それは、礼儀だ。
こんな個人経営の会社だけれど・・・と言っていたが、それでも、この朴訥とした青年には、向いているような気がした・・・。
知識も技術も必要だし、人の悲しみに寄り添える仕事も、この辺鄙な場所であっても。
「一期一会」とか「一期一縁」という言葉があるけれど、私は一緒にチビのお骨を拾ってくれた人が、この青年でよかったと思った。


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